迷いの窓NO.26
Shall We Dance? T
2004.5.10
  冒頭に、当コラムのバックナンバー「介護の部屋」をご訪問いただき、激励やご声援をお寄せいただいた友人、知人をはじめ多くの方々に、心から御礼申し上げます。
幸い叔母は徐々に快方に向かっており、最終検査のクリアーを待って退院の日を指折り数えております。 拙いコラムの発信にも拘わらず、斯くまでご心配をいただきましたことに、深く感謝申し上げます。


 今、ホテルの小部屋のような個室病棟で、この原稿を打っている。
看護師さんに身体を拭かれ、気持ちよさそうにベッドに横たわる叔母の寝顔を見守りながら。

  一度は参加したいと思っている講習会があるのだが、昨年の12月に札幌で受講する機会を逃してしまった。
それは健常者と障害を持った人がコンビスタイルで踊るソシアルダンス。
名づけて「車椅子ダンス」。
イギリスで生まれ、ドイツで現在のスタイルになったそのダンスが日本に伝えられたのは1991年というから、まだ国内での歴史は浅い。

  私は大学の競技ダンス部に所属していた経験がある。
時折「社交ダンスってスポーツ?」と言う人がいるが、競技ともなれば、もう立派な体育会系なのだ。  関西学生舞踏選手権大会に出場した頃が今は懐かしい。
昨年まで勤務していた会社に4年前突然、「社交ダンス同好会」なるものが発足したことから、ダンス熱が再燃。現在は健康のためにレッスンを続けている。

  一年程前、TVで初めて「車椅子ダンス」を目の当たりにした。
車椅子マラソンやバスケットなどの競技は知っていたが、ソシアルダンスがあるとは思いもよらなかった。
実を言うと、あまりのレベルの高さに驚かされた。
リーダーとパートナーの何れかが車椅子を使用していること以外、特別な事は何もない。
むしろスピード感があって、通常の社交ダンスより興味を惹かれた。
踊っている人の表情も素晴らしく、すぐさま習得したいと言う衝動にかられてしまったのである。

  現在日本の社交ダンス人口は、1,000万人とも言われている。
1996年の邦画「Shall We ダンス?」の影響やタレントのウッチャン、ナンチャンによる「社交ダンス部」が真面目にダンスの大会に挑戦するTV番組が人気を博す中で、生涯スポーツとして社会的にも認知されるようになり、ダンス人口が急増している。

ノーベル賞を受賞した田中耕一さんが「受賞パーティーのためにダンスを練習されますか?」との報道陣の問いに、はにかんでいらしたのも記憶に新しい。
ソシアルダンスほど国際社会に通用するコミュニケーションはないのである。
何よりマナーを重んじ、相手を尊重しなければ踊れないことから、人間形成にも役立つ。
私は日本でも中高生の情操教育に役立てればよいのに、と思っている。

  社交ダンスの醍醐味は何と言っても他者と一体になって感応、共振する三昧の境地と言うことになろうか?つまり単純明快に「楽しい」のである。
スキンシップの少ない日本人にとっては、恋人でもない人の手を取って、半身を接して踊るのは初心者のうちは抵抗があるようだが、続けるうちにいつの間にかボディーランゲージの虜になり、当初抱いていた先入観など忘れてしまう。(NO.27へ続く
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