NO.67 ベルギーからのメール 2005.6.6 |
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何しろ「ベルギーは世界一のビール王国」 日本でベルギービールと言えばピルスナーが一般的だが、とにかく種類がとてつもなく豊富で、感動の出会いの連続にビールの認識に変わるとまで言われている。 そしてビールと同じ数だけと言っても過言でないほど、様々なフォルムの専用グラスが用意されていることも、一層ベルギービールファンを魅了するのかもしれない。 つまり旨味を十二分に引き出すように形が工夫されているのだ。 ベルギーのビールはアルコール度数が高いものが多く、泡が消えやすいため、グラスの中を覗くと一見無造作と思える色々な形のキズがつけてあるものが少なくないそうである。 そう言えば、トラピスト修道院で造られる「トラピストビール」というのがある。 数あるベルギービールの中でも、特徴的で味わい深いものと聞く。 「修道院でビール醸造」ちょっと意外な印象を受けるかもしれないが、「ビールはあくまで健康飲料。日本の高野山で胡麻豆腐を造っているのに似ていませんか?」との問いかけに<なるほど!>と頷いてしまった。 「トラピスト修道院」と言えば私には馴染みのある名称だ。 函館郊外の渡島当別に日本最古の男子修道院があり、市内には女子修道院として知られる「天使の聖母トラピスチヌ修道院」がある。 イタリアのモンテカッシーノに修道院を設けた修道教会の創始者ベネディクトウスの厳律シトー教会のことを「トラピスト会」とも言った。 トラピストの名前はそこに由来し、修道会では「祈り、働け」がモットーである。 ベルギーの修道院でビールやチーズが製造されるように、函館ではバターやバター飴、クッキーが造られて北海道の名産品となっている。 異国の信仰が遥々旅をして我が故郷に辿り着き、根付いたのかと思うと感慨深いものがある。 近年まで男子禁制だったトラピスチヌ修道院で、最初に出迎えてくれるのは「聖ミカエル像」である。 かつてヴィクトル・ユーゴに「世界で最も美しく大きな広場」と「!」を抱かせ、ジャン・コクトーに「絢爛たる劇場」と称えられたグランプラス。 見上げるとゴシック様式で知られるブリュッセルの市庁舎があり、建物の中央にそびえる96mの塔の先端にも、やはり市民の守護聖人である大天使ミカエルが翼を広げているという。 夜になるとライトアップされた建物が優雅な姿を浮かび上がらせ、見る人を幻想の世界へと誘うのだろう。そこではゆっくりと時間が流れていく。 メールを下さった女性は「日本の心」をとても大切にされている方。 ブリュッセルという国際舞台で華麗に羽ばたき、ご活躍されている。 そのメールの内容には人生哲学があり、綴られる言葉は光のシャワーとなって私の許へ届けられる。 今、大天使の翼の中にまだ見ぬベルギーの大切な方の面影を探しながら、遥かな国へ心の旅をしているような気持がする。
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