![]() 杖は杖でも(後編) 2005.2.21 |
種々の理由があって、私は歯科医を変えることにした。 函館というところは美容院と歯科医院が多い土地柄である 美容院の評判や知人の情報を頼りに探すのだが、中々「ここ!」という先生には巡り会わなかった。どうも歯科医だけは相性があるようだ。 新しく通い始めた歯科医院は、明らかに今までとは異なっていた。 1本1本の歯の詳しいレントゲン検査の結果をもとに、状況説明と今後の治療計画について歯の模型を用いながら詳しい説明が行われた。 最初に、従来の治療が保険の範囲で出来ないことの断りもあった。 最も気に入ったことは、麻酔の注射が痛くなかったことだった。 塗り薬を塗った後の注射(今度は手動)は全く苦痛を感じなかった。 削る音はどこも変わらないが、驚くほど短時間であった。 非常に高度なテクニックとソフトな対応に好感を覚えたのである。 急に歯のことが知りたくなって、歯に関するHPを散策していた。 ある歯科医のHPに「あなたの歯は何本ありますか?」という問いかけがあった。 歯に関心がある人でも、即答できる人は少ないという。 本来の人間の歯の本数は?正解はクリックしないと見えない仕組みになっていた。 不意に仏の三十二相のことが頭に浮かんできた。 三十二相には仏様の手足の指の間に水かきがある(手足縵網相)とか、眉間に白い毛が右巻きで生えていて光を放っている(眉間白毫相)等の特徴が挙げられている。 歯に関するものは 22.四十歯相(40本もの歯が美しく並んでいる) 23.歯白斉密相(歯がみな真白で美しく、大きさが同じで隙間がない) 24.四牙白浄相(上下4本の歯はもっとも白く鋭い) 仏様の歯は40本。人間は?自分の歯は? 情けないことに分からなかった。 降参して答えを見た。 人間の永久歯は32本。(但し、 上下左右を4等分にすると、1区画が8本ずつのユニットになっていて、前歯(野菜や果物をかじる歯)が2本、犬歯(肉を噛み切る歯)1本、臼歯(米や麦などの穀物をすり潰す歯)が5本あり、左右対称に生えているということだった。 正しい名称は手前から、 理想的な食事は野菜・果物:肉・魚:穀類を歯の比率と同じ2:1:5の割合で食べることにあるという。正に目から鱗だった! 思わず鏡を手にし、自分の歯を確認した。 親知らず(第3大臼歯)は抜いた覚えがあるので28本だった。 これまで酷使してきた自分の歯を生まれて初めて愛しいと思った。 1本ぐらい無くても構わない、虫歯になったら治療すればいいなどと安易に考えていたのだ。 歯を守るのは自分自身。 「歯は治らない。」治療した歯はもとの歯よりずっと弱くなるという。 「虫歯になったらもう手遅れ。予防につとめない限り、転落の道を歩くことになる。」 というお言葉がずしりと胸に響いた。 考えて見ると、損なったら二度と取り戻せないものは世の中に沢山ある。 要は意識しているか否かである。 最も身近にあるのにその悲鳴が気が付かれずに看過されているのが、毎日ひたすら黙々と己の使命を果たしてくれている我々の「歯」なのかもしれない。 80歳までに20本は残し、いつまでも自分の歯で豊かな食のある健康的な生活を送れるように、「歯にこそ、転ばぬ先の杖が必要!」と心して、今日も正しいブラッシングを励行することにしよう。 |
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