![]() 命の水(前編) 2005.1.20 |
今年の干支は 例えば香典のでんの字、本来は酉の字を含む「香奠」と書いた。 古代アジアには広く「モガリ」という葬送の習慣があった。 日本でも3世紀前半には<人が死ぬと新しく「 香奠のもとの姿は「仏様の食べ物」つまり食料香奠であった。 奠の字は管理(八)した酒の壺(酉)を台の上(一八)に置いた様子を表したのもので、上述からするとこの字を充てたのも頷けるが、公家のしきたりを重んじる京都では近年、葬送儀礼の場において酒の意を持つ「酉」を生臭として「香奠」の字は使われない傾向があった。 さて、「五臓六腑に染み渡る」とは旨酒をクイッとあおった時に用いる常套句である。 思わず口を突いて出る言葉だが、実際に「五臓六腑とは?」と問われたら的確に説明するのは難しいのではなかろうか? 私はこの「五臓六腑」を見たことがある。 嵯峨釈迦堂の名で親しまれている京都の清涼寺でのこと。 この寺院のご本尊は日本三如来に数えられる37歳の生き姿を刻んだ等身大の釈迦如来像。 985年、東大寺の僧「然が模写させ日本に請来した三国伝来(インド〜中国〜日本)の尊像は「 そのお釈迦様の体内から出てきたのが、五色の絹で作った「五臓六腑」だったのである。 これは当時の中国の解剖面における医学上の知識を知る上で極めて重要な資料であり、「世界最古の体内模型」と伝えられている。 中国では人体を小宇宙と捉え、五臓六腑もまた陰陽五行の考えに基づいている。 五つの臓器である肝・心・脾・肺・腎は陰と考えられ、五つの腑は陽にあたり胆・小腸・胃・大腸・膀胱、これに 三焦は中国医学にしかない概念で、臓器としては存在しない。 また五臓には西洋医学の膵臓という臓器がないので、現代的に言えば、「六臓五腑」となるようである。 膵臓は死後変化を起こしやすいので、腑分けの際に臓器とは分からなかったという説もある。 それにしてもこの時代に、これほど正確な五臓六腑を仏像の体内に納めていた中国医学は驚嘆に値するものがある。 ちなみに杉田玄白がドイツ人クルムス原著のオランダ語訳医学書『ターヘル・アナトミア」を基に『解体新書』を著わすのはそれから789年後の1774年のことである。 仏様にも人体の小宇宙があると考えられたことは、人間をより仏に近づけ、その後の信仰を支える要因になったとも言える。 こんなことを考えながらいつものようにお酒に関するHPを散策していると、「五臓六腑に染み渡る焼酎」というキャッチコピーが目に飛び込んできた。 父方の祖父の隔世遺伝のためか、私はどうやらアルコールを受け付ける体質のようである。 もともと人間には所謂「下戸」と呼ばれる体質の人はいなかったそうで、中国大陸にいた1人のモンゴロイド人の遺伝子に起こった突然変異から「下戸」が生まれたと聞いたことがある。 ワイン、日本酒、焼酎、バーボンと、料理や時と場所、相手により色々なお酒を楽しんでいるが、最近の晩酌はもっぱら焼酎である。 お酒は醸造酒、蒸留酒、混成酒に分類されている。 焼酎は醸造酒を蒸留することによって生まれた「蒸留酒」。 蒸留の技術はメソポタミア文明にはすでにあったと言われ、これはお酒を造るためではなく、香料や精油を取るために生まれたものである。 その後、アラビアの錬金術師によって蒸留器が作られ、アルコールの蒸留が行われるようになったものの、用途は気つけや消毒などの薬用であった。 蒸留酒のことをラテン語で「アクアビット(命の水)」と呼ぶ。 ブランデー、ウイスキー、ジンやウオッカもすべて蒸留酒であるが、日本の焼酎との違いは度数が高すぎて食事と一緒に飲まれることが少ないことである。 日本の焼酎は「割り水」をして25度に仕上げているものが多く、さらに飲み方によっては水割りやお湯割りをすることから、食事に適したお酒ということができる。 なおかつ日本酒やワインのように料理を限定しない。 焼酎が二日酔いしないことはよく知られている。 蒸留の過程で二日酔いの原因となるアルデヒドやエステル類などが取り除かれるからである。 もともと香料の抽出のために考えれたものだけに香りがよく、アロマテラピーの効果も期待できる。 また最新の研究で、焼酎は血栓を溶解する酵素を活性化し、心筋梗塞、脳梗塞、老人性痴呆症という病気の予防につながることも分かってきた。 そして何よりの人気の秘密は糖分が0ということ。 ダイエットや糖尿病にも心配ないという訳だ。(NO.53に続く) |
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