迷いの窓NO14
光の友
2003.12.31
  私のことを心の友と呼んで下さるその方は、私にとって友人というより大日如来様のような存在である。
松下さんとの出会いは今年に入ってまもなく、私の人生の道しるべとも言える方が経営する「さいくる」という喫茶店でのこと。
まるで輪廻する縁の輪が、引き合わせてくれたようにも思える。
初対面という印象は全くなかった。
一瞬で、その人の人なつっこい明るいお人柄に魅了されてしまった。
私を何より驚かせたのは、難病を抱えていらっしゃる方にはとても見えなかったことである。
松下さんは骨がもろくなって溶け出してしまう「骨溶解性多発疾患」という難病の持ち主。
世に難病と呼ばれるものは数あれど、世界で症例が十例、日本でお一人という、医学のこれほどまでに進んだ現代にあって、未だ原因も治療法も解からない病である。

17才で発病して還暦を迎える現在に至るまで、想像を絶するほどの闘病生活を送ってこられた。  しかも長い道のりの間に、癌がみつかり右腕を切断、左の腕も度重なる手術のために短くなった。いつも死は隣り合わせにあったのだ。

  しかし松下さんは、一度も不幸だと思ったことはないという。
それどころかご自身を蝕む病魔に「骨食い太郎」と名づけ、童話風に一冊の本を書き上げた。太郎の弟の次郎や三郎を登場させ、「骨食い兄弟が身体から離れることがなくても、自分がいつも明るくニコニコ元気に生きることによって、静かに身体の中で眠らせることができる。」と。
病気と共存しながら強く生きる姿を描いた本は、感動の涙なしに読むことはできない。

  松下さんには常に次の目標があり、夢がある。
そのバイタリティーは本の出版のみにとどまらず、はた目には不自由と思える身体をものともしない水泳大会への挑戦、ご自宅を松下塾と名づけて悩める人の相談にも乗り、求められば講演にも赴く。
人との出会いが何よりのお薬とおっしゃる松下さん。
何処へ行っても、誰と会っても、持ち前の明るさですぐお友達になり、人気者になってしまう。
身体に痛みを感じない日はおそらくないと思うのだが、具合の悪いことなどおくびにも出さない。
食欲も旺盛で、小さなマイグラスで飲むビールが大好き!一緒にいると、時々難病などということが信じ難くなる。

  松下さんに比べたら、自分の抱えている悩みなどというものは取るに足りないことに思えて、いつのまにか元気と困難に立ち向かっていける勇気をいただいている。
多くの人の心を太陽のような光で照らし、励ましを与える姿から、友人の一人は彼を「光の友」と呼ぶ。
今年の5月にはNHK教育テレビ「きらりと生きる」にも出演された。
絶版になっていた「骨食い太郎」の再販も多くの人の懇願によって実現し、ますます尊い命の炎を明々と燃やしている。
光に触れたい方は、是非HPをご訪問いただき、優しい挿絵の「骨食い太郎」もご購読下さい。
http://homepage2.nifty.com/honekuitarou/index.html

  今年のコラムの最後に、大日如来様のように生きることの素晴らしさを教えて下さった松下捷利さん、救世観音様のように「空飛ぶ水冠」の発信に一筋の光明を与えて下さった、大阪高級葬儀株式会社の久世栄三郎様、そして支えて下さった多くの方々に心から感謝申し上げます。

昨日京都の知人から届いた絵葉書には、西本願寺の阿弥陀堂の写真と共に、次のような言葉があった。「み仏の 命の中に 生かさるる」それは、今の私の胸中そのものである。
「空飛ぶ水冠」発信者・文責   江口香織   
〒042-0942  函館市柏木町7番19号
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