法衣の部屋 香色
こういろ
熱帯地方の常緑樹である「丁子」という木の蕾を乾燥させると丁子香になる。
香色とは、丁子香や伽羅などの香の高い香木を用いて染めた柔らかいベージュ色のような染め色のこと。芳香が匂うような風雅な色名である。
平安貴族に好まれ「源氏物語」や「枕草子」などの文学作品にも伺える。
黄櫨染にもなぞらう香色は仏教でも尊重され、僧正以上の僧衣にも用いられるようになり、法皇もお召しになった。
絶対禁色(ぜったいきんじき)  (即位の礼、立太子の礼等の正式で現代まで皇室に受け継がれる)
黄櫨染(こうろぜん)
嵯峨天皇以降、歴代の天皇が正式の時に着用される袍の色。
黄櫨の若芽を煎じた汁に蘇芳の煎汁で染め重ね、それをさらに黄櫨で仕上げるという手間のかかる複雑なもので、同じ色のものは二つとできない。
黄丹(おうに)
衣服令以来の皇太子の袍の色。
紅花と支子(くちなし)で染色された。
後にこの支子で染めた色を香染めと呼ぶこともあった。


丁子の話

  「丁子」はモルッカ諸島が原産地で、現在「クローブ」として広く料理に使われている。
古くは実を粉末にして建胃剤、風邪薬などに使用された。
また丁子の実を絞った丁子油は、麻酔剤、防臭剤にも利用された。
現代ではすだちやカボスなどの柑橘類の皮に、針山に待ち針を刺すようにクローブを沢山刺して部屋の隅に置いておくと、ゴキブリ除けになると話題になっている。

  日本には平安時代から輸入され、正倉院にも御物が現存する。
丁子は香料、薬として七宝の一つとされるほどの貴重品であり、家紋や寺紋として積極的に取り入れられるようになった。
家紋の中でもこの丁子紋は、日本人の感性とデザイン性の高さを感じ、私が最も興味をそそられるものの一つである。
その理由は、どうみても大根にしか見えない何ともユニークな形にある。
香色に始まる丁子談義は尽きない。

丁子紋 丸に違い丁子 中輪に五つ丁子 丸に三つ並び丁子 三つ追い丁子
丸に違い丁子 中輪に五つ丁子 丸に三つ並び丁子 三つ追い丁子
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