法衣の色 木蘭
もくらん
インドで生まれた伝統的な三種の壊色の一つ。
「十誦律」や「有部律」には「茜」と記されているものもある。
木蘭の樹皮の色で黄みを帯びた褐色。



  現在でも南都六宗に属する戒律を重んじる宗派では厳格なまでに壊色が重んじられている。
仏陀の教えに叶うということからこの壊色のことを如法衣と呼び、律衣に分類される。

  2003年3月、法相宗の薬師寺大講堂落慶法要に際し、敦煌の壁画や正倉院の資料を参考にしながら、奈良時代の法衣26着がみごとに復元された。
七条袈裟は甲(田相部分)には「遠山」と思しき模様に彩色が施されており、縁(条と堤を含む)の部分は深緑のような壊色であった。
このように正倉院に残る七条袈裟は、種々の裂々を重ねて刺し子を加え芸術的な作品となっている。
七条袈裟の下の木蘭色の衣が晴れの日に華を添えるように、鮮烈に目に焼き付いた。

  小乗仏教が伝わった国では、在家仏教である日本とは異なり、僧侶は今も肉食、妻帯はしない。
厳しい戒律が守られるこれらの国では、僧侶の衣は壊色である。
タイのスコータイ王朝の中心寺院だったワット・マハータート(大きい仏舎利の意)
3代ラーム・カムヘン王の頃多くの寺院が建立され、仏教を基盤とした王朝文化が華開く。
民衆の信仰に支えられて寺院は現在に至るまで独自の文化と伝統の中で守られ、貴重な人類の文化遺産となっている。
大仏がまとう木蘭色の衣が信仰の力強さを物語っているように思える。


ワット・マハ−タート 
ワット・マハータート 
ワット・シーチャムの大仏
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