３

4.日本の色

色に関する法律
年号	法律	色彩序列
６０３年	冠位十二階の制度	紫	��	赤	黄	白	黒
７１９年	養老の衣服令	紫	緋	緑	縹	黄	黒
９９0年頃	「延喜式」の染式廃止	黒		赤		縹

中国では皇帝は天子であるが日本では天皇は神である。 中国で天帝の色であった黒は、古代日本では地下の闇、黄泉に通じる色彩として厭われた。 女神アマテラスは太陽神、闇にあっては男神ツクヨミが月と星を支配している。 日本の神は明るいもの、光の源泉、象徴する色は白なのである。 律令制度が導入される過程において、中国で重んじられた黒が、冠位十二階の制度、養老の衣服令の色彩序列の最下位に配せられていることからも、日本人が黒に対していかに抵抗感を抱いていたかが窺い知れる。位階の色は当初から日本独自の様相を呈していく。 制度には天皇の色は記されていない。天皇は神と考えらていたためである。 天皇の袍の色は黄櫨染、皇太子の色は黄丹として前者は嵯峨天皇（８２０年）から後者は衣服令以降現代に至るまで絶対禁色となって、即位の礼や立太子の礼等に着用されている。   現在日本の寺院で使われている五色幕の色は「紫、白、赤、黄、緑」である。 これは能楽の鏡の間から橋懸りに通じる役者の出入り口に使われる揚幕(あげまく)の色と同一である。 この五色は、五正色でも五間色（紅、碧、緑、瑠黄、紫）でもない。 京都の冷泉家に伝えられる乞巧奠(きっこうでん（七夕）の行事で厳格なまでに五正色が守られる一方、上述の如く五色と言えば黒が全く除かれて中間色の紫や緑を配すを以って五色と称し、あたかも陰陽五行説に基づく色などと誤解を生じていることは真に残念である。   「古事記」によれば古来からの日本の色は、祭祀に関わる天つ神系の青と白、黄泉の国につながり超自然的な力を持つ国つ系の赤と黒の四色であるという。   上  寺院の五色幕 右  乞巧奠の几帳

戻る

次へ